里山の秋:ヨモギの虫こぶ
背の低いヨモギの茎に、「虫こぶ」ができていた。少し紫紅色のこの虫こぶは、ミバエ科の幼虫が作ったヨモギクキマルズイフシだろうか。
「虫こぶ」は、虫嬰(えい)とも呼ばれるけど、その名前の付け方には決まりがあるそうで、植物の種類+虫こぶのできた場所や形など+フシ。
ヨモギクキマルズイフシは、ヨモギ(植物名)クキ(茎、虫こぶができた場所)マルズイフシ(虫こぶの形)。
最後の”フシ”は、虫こぶを意味していて、ヌルデの葉にできる虫こぶからきた名前だ。ヌルデの虫こぶは、タンニンを含むので、皮なめしに使われたり、染物では空五倍子色(うつふしいろ)と呼ばれる伝統的な色のほか、お歯黒にも使われ、五倍子(ごばいし)とか、付子(ふし)と呼んで腫れ物、歯痛などの生薬としても利用されていた。
さて一方、狂言の演目「ぶす」は、トリカブトの根からとった猛毒で「付子」と書くこともあるので要注意だが、区別のため「附子」と表記するようだ。主人が猛毒だと近づくのも禁じた「附子」は、実は貴重品の砂糖である。主人の留守の間に食べ尽くしている二人の冠者。手ばなしの人間謳歌が、すべての狂言の通奏低音だ、と僕は思っている…と、これはまた別の話であろう。
虫が出す物質で植物の組織が成長して膨らみ虫こぶとなる。虫の幼虫は、この虫こぶの中で育つ。虫と植物との面白い関係を見ることができる。自然ってとっても不思議で面白いなぁ。
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