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ビアンキ『森の新聞』

 世界の児童文学の中でソビエトの児童文学ほどその時代を反映したものはない、との事だが、小学校の頃、高熱をだして床に伏していたとき、従兄からビアンキの『森の新聞』をもらったのも、60年代前半の日本の時代を反映してのことだったのだろう。

 行ったことも見たこともないソビエトの広大な大自然と動物たちや鳥や樹木が語る季節の息吹は、僕にとってのファンタジーであった。『森の新聞』には、各地の特派員からの報告という欄があり、生き物の情報をビアンキの新聞に集約するネットワークがソビエトの広い国土に築かれていることに感動した。ソビエトの地理を想像しながら、僕は特派員報告をわくわくしながら読んだ。ビアンキの本には自然を愛する心がよく表現されている。

 さて、ネットで注文して『森の新聞』の古本を手に入れることができた。日に焼けて色の褪せた表紙を捲ると懐かしい思いが込上げてきた。今読むと、『森の新聞』は、フェノロジー(生物季節学)のドラマを新聞という形式で見事に表現した稀有な本であると思う。人と自然の関わりは今の時代のテーマであり、少しも色褪せてはいない。ぜひ、復刻を望みたい。

森の新聞/春の森の表紙森の新聞第1号

ビターリー・ビアンキ

内田莉莎子 訳 冬の森はタカクラ・タロー 訳

牧野四子吉 表紙カバー・さし絵

1957年〜1958年 理論社 刊

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