里山の冬:冬尺
1年にただ1回、冬にだけ羽化するフユシャクは、霜枯れの野の冬のスターだ。この20種類ほどの蛾は、すべて地味なシャクトリ蛾のなかまである。
このなかまでは、クロスジフユエダシャクだけが昼に飛ぶようだ。晩秋から初冬にかけて、30匹を超える彼らが雑木林を元気に乱舞する姿は見事である。
彼らと云ったのは、飛べるのは雄だけだから…。雌は、翅が無く飛ぶこともできない。翅を失い、まったく食べ物を摂らないのは、冬の寒さへの適応ということらしい。翅をなくしてエネルギーを使わずその分の栄養を卵に回したほうが都合がいい。翅のないほうが、寒い外気で体温が逃げる割合も低くなるだろう…。交尾し、卵を産むことだけが、成虫の仕事なのだ。
フユシャクは、真の冬の昆虫である。
さて、このフユシャクの沢山の雄たちが、アシヨレグモの網に捕われている画像をネットで見た。アシヨレグモは、雄の冬尺を呼び寄せるフェロモンを放ってでもいるのだろうか? このクモは、冬に成体が出現するクモである。天敵の少ない冬場に成虫の時期を持ってきたはずの冬尺であっただろうに! 虫たちにとっての冬は、寒さをしのぐだけではなさそうなのである。
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