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里山の春:いぬふぐり

 畦の路肩や日当たりのいい土手の斜面で、オオイヌノフグリが青色の可憐な花をひらいた。4枚の皿のようにひらいた花びらと黒紫色のやくをもつ2本のおしべ。花粉が少ないのだろうか、花を訪れた蜜蜂はすぐ次の花へと飛んでいく。晴天であっても、ハナアブ類は花の高さの気温が10℃、ハナバチ類は15℃以上にならないと活動を始めないし、オオイヌノフグリのすべての花が開花する温度も花の高さで15℃以上が要るらしい。送粉する虫たちに合わせて開花するようだ。

 その実の形は、”犬のふぐり”と云われればそうかもしれないけれど、可憐な草にとっては不名誉な名前をつけられたものだ。さて、学名のVeronicaの方は、だれ一人同情を寄せようとしない十字架道行するイエスに、思いがけずベロニカという女性が進み出て布を渡すと、イエスは顔をぬぐい返したという聖女の話に由来する。いぬふぐりの花の形と色は、布で顔をぬぐったイエスの顔面になぞられるというわけで、こちらの方は、早春に咲くこの花の清楚な美しさをよく表していると言えよう。

オオイヌノフグリの花を訪れたミツバチの写真

畦に咲くオオイヌノフグリの写真

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