里山の春:早春の陽ざしとビロウドツリアブ
3月の末、里山の山道を歩いていると道端に積もった落ち葉の上でひなたぼっこをしているビロウドツリアブに出会う事ができる。ただ春といっても、北風のまだ寒い日には、ビロウドツリアブは飛ぶのをやめて、かん木の小枝につり下がっている。早春の陽ざしの中、紫色のスミレ咲く野を花から花へと飛びかっているビロウドツリアブは可憐である。遠くに目をやれば、山桜が幽(かそ)けしき佇まいを見せている。「ああ、春だなあ…」おもわず、こうつぶやいてしまう。
3月末から5月にかけて、ビロウドツリアブは春だけにあらわれるアブだ。体は黒いが、ふさふさとした黄色の長い毛でおおわれているので、体中が黄金のビロードにつつまれているようにみえる。花を訪れてはホバリングしながら針のようにとがった口で蜜をすう。さながら、ハチドリのようだ。
春のチョウをその季節の景物だとすれば、ビロウドツリアブは春を告げる虫である。このアブを見るとつくづく春になったと感ずる。
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