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熊本くも合戦 (2009年7月19日)

 有明海に注ぐ緑川と加勢川をつなぎ水位を調節する水門である中無田閘門(こうもん)。山が近く、ゆったりと流れる清流は、懐かしい日本の原風景である。川辺では、親子連れがテナガエビ釣り…、心癒される景色である。「いいところですね」私は、藤本さんに話しかけた。

 平成9年から熊本市内を巡回しながら毎年行ってきた熊本くも合戦の今年の開催場所として選ばれたのが、中無田閘門プレイパークである。熊本くも合戦実行委員会の藤本 宏さんは、鹿児島・加治木のくも合戦を訪れ、目を輝かせて参加している子どもたちに感動し、熊本でもこの伝承遊びを復活させようとの思いで始められたとのこと。鹿児島の加治木、高知の中村、和歌山の海南を訪れて来た私は、熊本のくも合戦も是非取材したいと今回の熊本の旅となった訳である。くも合戦前日の晩、藤本さん、司会進行を務めた林さんと居酒を飲み交わし馬刺しをご馳走になりながら話が弾んだ。他の人とはちょっと違ったものを持っている人のことを熊本の言葉で「異風者(いひゅうもん)」というのだそうだ。ボランタリーでくも合戦を続け今年で13年、藤本さんは当に異風者。

 さて、中無田閘門プレイパークでテナガエビ釣りをやっていた加勢川開発研究会の面々は、藤本さんのお知り合いで、くも合戦大会の会場を造り始めた。その手際の良さに感激である。山に植樹をし川をきれいにしようと活動されているNPO天明水の会もボランタリーで参加…、藤本さんの人脈の広さのなせる技である。皆さん、少年と少女の心を失わずに人生を楽しんでいる心優しき団塊の世代の異風者なのであった。

 ところで、中無田閘門の近く、川尻という町は昔港があり水運の拠点であったとのこと。クモ相撲習俗が漁師によって伝播したのかもしれないと思っている私にとってこれは面白い話である。いつも感じることだが、クモを追いかけていると、いいこと・いい人に出逢える。だから、クモは止められない。

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 川端勝夫さんから、2013年6月17日の朝電話があり、藤本 宏さんの訃報が届いた。鹿児島・加治木の「くも合戦」が開催された6月16日にご逝去されたとの事。藤本 宏さんのご冥福を心からお祈り申しあげます。(2013年6月17日 追記)

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