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クモ観察会の話

 「クモ観察会」の講師なるものを引き受けることとなった。子どもたちの文化を考える奈良のNPO団体からの依頼である。参加者は、小学校1年生から大人まで、約60名。うーむ、巾のある年齢層と多人数。「くもって、いいやつなんだ」ってことを感動を持って伝えるのは大変だ。こんなシナリオを作ってみた。

 「くもといえば8」の話をして、まず参加者を引き付けよう。クモの絵をトラペン用紙にマジックで描いて、体が頭胸部と腹部からできている、脚は8本で、目は8個、アンテナではなくて触肢ということを話そう。

 次に、三択クイズ。オスとメスの見分け方は?

  1. 目の色が違う。
  2. 4番目の脚の太さが違う。
  3. 触肢のかたちが違う。

 次いでこのトラペン用紙を、あらかじめ円網を描いておいた模造紙の真ん中に「上向き」にセロテープで貼る。
 どこか、おかしいなあ?
 ぐるっと、模造紙を回して「クモは、頭を下にして網に陣取る」ことに注意を促す。クモってどうして、頭に血がのぼらないで じっとできて 天井を歩けるんでしょう?
クモも、こん虫も、からだが小さいから、心ぞうから出た血液がそんなに 頭にたまらない からだと思います。

 名前が分かることは、「名も知らぬ虫」を同定(identification)することで、その虫がアイデンティティーを持つようになることですし、虫と親しくなる第一歩。でも、1回に覚えられるのは、せいぜい3種類ぐらいでしょう。
 観察のフィールドで、「3種類のクモを見つけておいで」と言って、子どもたちを解き放す。その内の1種を、フィルムケースで採集し、ガラスの薬ビンに移した後、虫メガネで観察…、目が8個、アンテナでなく触肢、オスとメスの違い。
 たぶん、シーズン的には、ゴミグモがいるとおもうので、ゴミカモフラージュの様子、触ると「僕、ゴミですよとばかりに、ぽとりとクモが落ちる様子」。もし、ギンメッキゴミグモもいれば、網に居る様子がゴミグモと違うこと、それは、どうしてかなあ…。
 クモの網に白のスプレーペイントを吹き付けて、網の様子が一度に60人で確認できるという方法も試してみよう。(うまくいくかどうか)

 シナリオ通りには、いかないものである。子どもたちは、いろんなクモを採集しては、その名前を聞きに来る。そう、採集することは子どもの本能なのだ!! そして、子どもたちは本当に目がいい。トイレのある場所を…、と整備された公園で行ったのだが、びっくりするほど いろんなクモを見つけてきた。

 網を張らないクモもいるヨ。クモのうち、網を張るのは半分ぐらいだ。地面の落ち葉の中をさがしてごらん。

 「虎みたいなクモがいたヨ。」と云って、マエトビケムリグモを差し出してくれた。ワシグモ科は、名前を決めるのが難しいのだが、分かりやすいクモでよかった。私は、そっと胸を撫で下ろした。

 秋の終わりにも観察会の依頼があり、「ジョロウグモでビンゴ」というのを作ってみた。季節から考えてジョロウグモ以外のクモは見つけにくく、参加者の興味を2時間持続させるのは難しいとの読みからだ。ここでも、シナリオ通りにならなかった。「ビンゴ」はすぐに完成。そして、様々なクモが見つかった。中でも、参加した高校生が見つけてくれたヒシガタグモは、信貴山で初発見のもの。子どもたちの観察眼に脱帽である。参加の子どもたちにいっぱい教えてもらえるのが観察会なのだろう。

ヒシガタグモの写真へ【関連トピックス】キッズ版くものページ より


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