中村の全日本女郎ぐも相撲大会 (2005年)
「八卦良ーい、残った」境内に行司の声が響く。ここは、四万十川で有名な中村市街にある一條神社。8月7日の日曜日、”全日本女郎ぐも相撲大会”を訪れた。女郎ぐもは、コガネグモの中村方言である。参加者が持参したクモは、体長2
cmを基準に大きな”幕内”と小さな”十両”に振り分けられる。”幕内の部”と”十両の部”それぞれの部に分かれてのトーナメント戦だ。高知県外からの参加者にも”観光客の部”としてトーナメントを組むのも『全日本』と銘をうった大会ならでは…。「幕内36名、十両38名、観光客の部19名で計93名ですよ」と、若い美人の受付のお嬢さんに教えてもらった。
中村の”くも相撲”は、”ひもし”という横棒の土俵の下に水を張った入れ物を置くのが珍しい。これは、落ちたクモが水をいやがり、ふたたび土俵へ登って闘うことを促そうというもので、15年程前から考案されたしかけである、とは宮司の川村公彦さんの弁。「クモは、水に脚をつけたら登っていく、水に落ちたら負けだ」とのこと。また、神楽舞台で行われるのも趣あるところだ。行司衣裳を身に着けた二人が”くも相撲”を取り仕切る。中村出身の中脇初枝さんが、福音館書店の『おおきなポケット8月号』に『くもの大相撲』という絵本を上梓された。中村に来る前にこの絵本を見て予備知識を持ってはいたが、中村の”くもの大相撲”は加治木町とは一味違っていて面白かった。
さて、”ひもし”上の2匹のクモを行司の後ろから魚眼レンズで接写するカメラマンの出現に、「試合が遅れるから、行司の邪魔をしないように!」と観客席から声がとんだ。舞台の周りは熱気に包まれている。やがて、トーナメントも準決勝になると、負けた参加者が途中で帰ってしまうので境内は少々寂しくなってきた。敗者復活戦がないのだからこれはしょうがない。手持ち無沙汰になってきたので、木陰に佇んで休憩している先程のカメラマン氏とそのお連れの方に「いい写真を撮れましたか」と声をかけた。「いやー、子どもたちのいい顔を撮りたくてね」と。この御仁は、朝日新聞四万十支局長の菊池 均さんであった。お連れと思しき方は、高知新聞社幡多支社の奥村盛人さんで、お二人とも新聞記者さんであった。菊地さんは、蝶やトンボに大変詳しくて意気投合。トンボ王国や佐田の沈下橋を車で案内して頂き、徳島支局時代に朝日新聞徳島版に連載した記事をまとめた『均ちゃんの虫めがね』という著作まで頂戴した。クモを追いかけていると、いつもいい出逢いが待っている。これもクモが吉兆をもたらす虫だからなのだろう。
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