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里山の夏:鳥の糞とテントウムシにそっくりなクモと投げ縄グモ

 クロトリノフンダマシの写真へ2000年の夏、クロトリノフンダマシという珍しい蜘蛛に出会った。葉っぱの上に、脚を縮めているその姿は鳥の糞にそっくりだ。夏の日が落ちて暗くなると、縦糸が少なく横糸もとっても間隔が広い目の粗い同心円の網を水平に張り、網の真ん中に蜘蛛はぶら下がる。蛾をねらうのだ。安普請のこの網は、夜明け前にはかたずけられてしまう。だから、眠い目をこすって夜中に頑張らないと、この蜘蛛の網にはお目にかかれない。

アカイロトリノフンダマシの写真へ アカイロトリノフンダマシも珍しい蜘蛛だ。鳥の糞というよりは、テントウムシにそっくりの愛らしい蜘蛛である。習性は、クロと同じでやはり蛾をねらう。

ムツトゲイセキグモの写真へ 蛾をねらう蜘蛛で最も面白いのは、ムツトゲイセキグモだろう。昼間は葉の裏でじっとしているが、夕方になると粘る糊のしずく(粘球)をつけた糸を2番目の脚から5pほどの長さに吊り下げて振り回す。イセキグモの仲間は、「投げ縄」で蛾を捕まえる「投げ縄グモ」なのだ。このクモは雌の蛾のフェロモンと同じ匂いを出すので、雄の蛾たちはこの匂いの誘惑に負けて捕まってしまうというわけである。この蜘蛛は、超稀産種で蜘蛛に興味を持っている人でも、一生の中に1回か2回お目にかかれるかどうか、というものだ。

 早速、花瓶にススキと椿を挿し、ここにムツトゲイセキグモを放ってやる。捕虫網を取り出すのは何年ぶりだろう。近所の公園の水銀灯で蛾を捕まえて、部屋に放した。蜘蛛は、夜7時頃になると糸を引きながらうろつくが粘球を出さない。そして、葉にほんの少しひいた糸に脚をかけてじっとしたまま。2時間おきに蜘蛛はうろつく。結局、翌朝6時には葉の裏でじっと止まってしまった。徹夜した甲斐もなく、「投げ縄」を見る事はできなかった。うーむ、残念。上手くはいかないもんだ。採集したところに還しておいてやることにした。翌年に子グモを残してくれよ、と祈りながら。

 これら珍しい3種類の蜘蛛たちにお目にかかれたのはまったくラッキーなことである。宝くじでも買ってみるとするか。ちなみに、これらの蜘蛛たちとの出会いの場所は、三重県名張市の近鉄赤目口駅付近の「里山」である。

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