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里山の初夏:ギンリョウソウ
今年も、同じ季節に同じ林床でギンリョウソウ。暗い雑木林の湿った落ち葉から、花と茎と葉と全てが純白。ハッとする。ギンリョウソウが地上に顔を出すのは初夏の僅か2ヶ月のみ。クロロフィルがなく光合成をしないギンリョウソウは、キノコの仲間(菌類)が共生する菌根を持ち、菌類を消化して「食べて」いるのである。暗い林床には、めったに虫はやってこないが、訪花するトラマルハナバチが花粉の受粉を手助けしているとのことらしい。この花の蜜を吸いにアリも訪花するとのこと。植物と虫の関係が、ギンリョウソウという菌生植物でも見られるのが面白い。生きものたちは、みんなつながって生きている。長い長い進化の過程の中で、クロロフィルを失い、光合成という営みを捨てる生き方を選んだこの植物も、虫たちや菌類とのつながりの中で生きているんだ。僕に暫しの思索の時をこの植物は与えてくれた。
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