くも合戦初陣の記 (2003年)
「うーむ,小さいですネ。まだ、亜成体ではないですか?よかったら、僕の千葉県房総の館山産を貸しましょうか。」加治木町の宿に持ち込んだ私のクモ3匹を見るなり東京の八幡明彦さんはこう云った。彼は、20匹余のコガネグモと観衆の受け狙いで大型のタランチュラや沖縄のオオジョロウグモ、さらには、本物のコガネグモそっくりの精巧な”つくりもの”を携えての参戦である。「いいえ、せっかく育てた奈良県産のクモですから・・・。」と、私は応えた。はてさて、明日の「くも合戦」は、どうなることやら。
今回の加治木入りは、そもそも最初からケチがついていた。加治木でクモを現地調達することも考え、早めの航空便を予約しておいたのだが、「伊丹空港16:00発、日本エアシステム657便は、鹿児島空港雨のため出発地の伊丹空港に引き返すこともあることをご了承の上ご搭乗ください。」と、非情なアナウンス。『勇んで加治木入り、と思っていたのに、それはないだろう!』飛行機は、鹿児島空港に着陸を試みるが滑走路が視認できぬため、機長は着陸を途中で断念。飛行機は急上昇。鹿児島上空を50分間旋回した後、やっと着陸したのだった。『やれやれ、出だしからついてないなぁ!』という訳である。
さて、奈良は気候条件でハンディがある。「参戦のために苦戦した飼育の記」とでも題したらいいだろうか。少しでも暖かい所と考えて、和歌山市加太で5月4日に採集した超小型のコガネグモは3回の脱皮をして20
mmぐらいの体長となった。四股名(しこな)は、「加太海」。奈良県生駒郡斑鳩町の法隆寺近辺で5月17日に採集した「斑鳩錦」と生駒郡三郷町産(5月23日採集)の「信貴山」は、それぞれ2回脱皮してこれらもともに体長20
mmぐらい。さて、餌が大変。釣り餌のサバ虫は、2週間ほどしたらものすごい数のハエが孵化して籠はハエでいっぱいに。近所の公園で採ったハエ。私は、ハエを生きたまま採る技を会得しているのだ。スズムシ(ペットショップにコオロギを問い合わせたら、宅配は1,000匹単位!!と云われて断念。よって、季節柄スズムシを高額にて購入)、トンボ・・・。軟らか系がいいようで,ハナムグリやマメコガネには食いつかない。軟らか系のミールワームも試してみた。ウシガエルの解剖をやったので、その残りのカエルの精巣やモモ肉も試しに与えてみた。
『まあ、参加することと、飼育の過程に意義がある。』私は、こう自分に言い聞かせるのであった。
「加太海」 5月4日 和歌山市加太城ヶ崎海岸で採集 2回目の脱皮をした直後の画像
「斑鳩錦」 5月17日 奈良県生駒郡斑鳩町の法隆寺近辺で採集
「信貴山」 5月23日 奈良県生駒郡三郷町立野で採集
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