くも合戦初陣の記・続編
いよいよ、日曜日。「くも合戦」の日がやってきた。昨夕できなかった現地クモ採集をすべく、朝の5時より雨の加治木を歩いた。まずは、日木山川の川岸を探索。昨年、ここでコガネグモを見ていたからだ。残念ながら、コガネグモはまったくいない。次いで龍門滝温泉へと向かう。八幡さんによれば、この辺りには結構いるとのこと。セイタカアワダチソウの茂みにクモは網を張っていた。奈良県産と同じぐらいの大きさのクモしか見つからない。大きいのは、とっくに採られてしまったのだろうか。龍門滝温泉では、朝6時から町営温泉に入浴できることを発見!龍門滝を見ながら朝風呂に入った。八幡さんと東京蜘蛛談話会の永井亜紀さんと一緒に飲んだ昨晩の焼酎が体から抜けていい気分だ。クモは駄目だが、これは大収穫であった。早起きは三文の得!?
さて、今年の「くも合戦」にエントリーしたのは、150名。一人3匹のクモを出場させるから450匹のクモが闘うこととなる。早くも私の出番がやってきた。高鳴る胸の鼓動、クモを魚篭(びく)から取り出す手が震える。奈良といえば法隆寺が有名であろう。法隆寺の里山で採って育ててきた「斑鳩錦」を一番手とした。相手は、強豪の入部さん。入部が、”かまえ”、私のが、”しかけ”。『いやー、相手はでかい。こっちのは、ちっこいなぁ。』と、私は心の中でつぶやいた。行司の西村さんは、「斑鳩錦」を見るなり首を傾げて笑った。勝ち目がないということなのだろう。勝負は、一瞬であった。「斑鳩錦」の負け。
1時間もたたぬうちに二度目の出番だ。「信貴山」を土俵に上げる。相手は、また入部さんである。「奈良県から出場ですか、小さいですネ。ハンディをつけてくれって云ってますョ。」と司会者。私がカメラの準備をする間もなく「信貴山」は糸を切られて負けてしまった。「奈良からわざわざ来られたのですが・・・、残念でした。」と司会者。私は、観衆にお辞儀をする。会場が沸いた。
さて、三度目は・・・、というと、これまた入部さんが対戦相手である。入部さんのクモは3匹とも3勝。出場させたクモ全てが王将戦に進んだ。つまり、「加太海」も負けてしまった、という訳で見事な惨敗である。会場で宮崎県から来たという松田伊織・リツ子さんご夫婦と知りあいになった。お二人は、昨年初参加され1勝されたとのこと。「宮崎は鹿児島に比べて寒いので、なかなかクモが大きくなりません。餌は、バッタが良いとベテランの強い方に教えてもらったけど、バッタがいないので育てるのが大変です。奈良は、もっと大変でしょう。あなたのクモは小さくて、闘わせるのが可哀想だネェ。」と親身になってくださった。松田伊織さんのクモは、2勝まで勝ち進んだが3勝できなかった。「あんたにこの2勝クモをやるよ、奈良に持って帰りなさい。」とおっしゃるので、ありがたく頂戴した。
また、加治木の谷口さんからは面白い話を伺った。「あなたの斑鳩錦と加太海は、けんかに強いクモだ。尻の先の方の黒い縞にも白い斑点があるだろう。こういうクモは、強い。もっと大きく育てれば強いクモになる。鹿児島では、大隈半島と薩南半島で、クモの大きさが違う。薩南半島の方が大きく育つのは、大隈半島よりも気温が1℃高いからだ。東シナ海に面しているせいだろう。子グモの時にどれだけ餌を一杯食っていたかということが、最後に脱皮してからの大きさを決めるようだ。」と。東京の八幡さんも、「夏から秋に子グモが小バエなどを一杯食べ、暖かい鹿児島では冬休みをせずに2月から3月頃には花を訪れるハチなどを食べ、さらに4月下旬頃からはコガネムシなど大型の餌が出現するという気候条件が大きなクモを生み出す。」という。「最終脱皮をして成熟すると糸も丈夫になり大型のコガネムシも網に付くが、幼体のうちはコガネムシなどをやってもクモは逃げたりするし、網にも付き難い。」と。そう、私のクモがハナムグリやマメコガネを食べず軟らか系の餌を好んだのは、まだ若かったからなのだろう。子グモの頃に腹一杯に小さい虫を食わせるのは大変だ。自然条件下でそのような場所を見つけること、暖かい所でクモをゲットするのが決め手なのだろう。近畿代表のクモは、和歌山市加太よりももっと南の地、黒潮洗う南紀辺りから採って来る必要がありそうだ。来年は、南紀産のクモで雪辱したいものだ。
龍門滝
右の大きいクモが入部さんの”かまえ”左の小さいのが”しかけ”の「斑鳩錦」
勝ち負け表:私はエントリー8、惨敗である。この後、14松田伊織さんの3匹目のクモは、2勝をする。
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